環境破壊や戦争といった大きな問題は、日々の暮らしの中で多くの現代人が感じる生きづらさと①根っこの部分でつながっていると、僕は思っている。
その根っことは、効率性や生産性や経済成長や消費増大などを最優先にして、そのためには生態系や平和や家庭の幸せを犠牲にしても仕方がないとするようなファスト(速い)な社会のあり方。なぜファストかといえば、より速く、より多く作って、売るものが勝つという競争原理に基づいているので、社会が全体として加速するからだ。
同じゴールに向かって競い合うのが競争というもの。いつのまにか、われわれ現代人は競争原理こそ社会の基本原理だと思いこんでしまったようだ。②競争がないと、人は怠けるようになる。すると、その社会は発展をやめて停滞してしまうというわけだ。
でも、本当にそうだろうか。社会とはそもそも同質の人々が、同じ目的に向かって競争的に生きる場所ではないはずだ。第一、どうして一人一人のゴールが違っていてはいけないのだろう。僕は競争を一概に否定するつもりはない。一時的には競争が人に刺激や力を与えることもあるだろう。しかし、社会には地域社会とか、コミュニティーとか、家庭とか、友人関係とか、本来は相互扶助の場所、競争になじまない場所もある。にもかかわらず、生産性や効率性をめぐる競争が、こうした相互扶助の場の中にまで入りこむ。そんな社会は生きづらい。また、そんな社会が長続きするとは思えない。でも、今の日本はそれに近い。日本ほど人々が互いを急かせ、自分を急かせている社会も珍しい。
サン・テグジュペリの『星の王子さま』がこう言っていたのは、僕たちのことではなかったか。「みんなは( ③ )に乗りこむけれど、今ではもう、何を求めて、どこに行こうとしているのかもわからなくなってる」。
僕たちは親として、子どもたちにいったいどれだけ「がんばれ」とか「急げ」とか言ったら気がすむのだろう。待てないのは、他人に対してばかりではない。自分自身にも待てないのだ。しかし、僕たちのこうした「④がんばり」が地球を蝕み、実は自分自身をも蝕み、その人生を空っぽにしてしまうことが見えてきた。
( ⑤ )、もうがんばるのをやめよう。もっとスロー(遅い)に生きることを考えてみよう。スローに生きるとは、自分の時間に、他人の時間に、自然の時間に寄り添うように生きること。あなたに、⑥こんな脳性麻痺の詩人宇宙塵氏の詩を贈りたい。
がんばらないは、幸せだ。
がんばらないは、自分の時を刻むこと。
がんばらないは、自分を知ること。
がんばらないは、地球を愛し続けること。
がんばらないは、宇宙。
がんばらないは、私だ。
問1 ①「根っこの部分でつながっている」とあるが、筆者は環境破壊や戦争を引き起こす根っこの部分とは何だと考えているか。
1 経済成長 2 競争原理 3 社会発展 4 相互扶助
問2 ②「競争がないと、人は怠けるようになる。すると、その社会は発展をやめて停滞してしまう」とあるが、筆者はこうした意見についてどう考えているか。
1 競争原理を社会原理にすることに基本的には賛成だが、もう少し競争が少なく、もう少しスローな社会の方が住みやすい。
2 賛成できない。社会には競争に向かない場所もあり、またゆきすぎた競争が地球や自分自身を蝕んでいる事実に私たちは気づくべきである。
3 賛成である。生産性や効率性をめぐる競争が社会を発展させてきたのであり、それを否定する意見を認めるわけにはいかない。
4 反対である。これまでの価値観を全面的に改め、競争から相互扶助へ、経済優先から自然との共生へ、今の社会を変える必要がある。
問3 ( ③ )に入る語はどれか。
1 各駅停車 2 長距離列車 3 寝台列車 4 特急列車
問4 ④「がんばり」は何を意味しているか。
1 競争に勝とうとすること 2 ファストに生きること
3 自分を急かせること 4 スローに生きること
問5 ( ⑤ )に入る語はどれか。
1 すると 2 ところで 3 だから 4 しかし
問6 ⑥「こんな脳性麻痺の詩人宇宙塵氏の詩を贈りたい」とあるが、筆者はどうして宇宙塵氏の詩を引用したのか。
1 人生を楽しく幸せに生きることの大切さを教えてくれるから。
2 障害者の目で、「がんばる」ことが地球を蝕んでいることを告発しているから。
3 私たちと違う世界の見方を知らせ、読者に何が大切かを考えてほしかったから。
4 人間がお互いに助け合って生きることの大切さを教えてくれるから。
その根っことは、効率性や生産性や経済成長や消費増大などを最優先にして、そのためには生態系や平和や家庭の幸せを犠牲にしても仕方がないとするようなファスト(速い)な社会のあり方。なぜファストかといえば、より速く、より多く作って、売るものが勝つという競争原理に基づいているので、社会が全体として加速するからだ。
同じゴールに向かって競い合うのが競争というもの。いつのまにか、われわれ現代人は競争原理こそ社会の基本原理だと思いこんでしまったようだ。②競争がないと、人は怠けるようになる。すると、その社会は発展をやめて停滞してしまうというわけだ。
でも、本当にそうだろうか。社会とはそもそも同質の人々が、同じ目的に向かって競争的に生きる場所ではないはずだ。第一、どうして一人一人のゴールが違っていてはいけないのだろう。僕は競争を一概に否定するつもりはない。一時的には競争が人に刺激や力を与えることもあるだろう。しかし、社会には地域社会とか、コミュニティーとか、家庭とか、友人関係とか、本来は相互扶助の場所、競争になじまない場所もある。にもかかわらず、生産性や効率性をめぐる競争が、こうした相互扶助の場の中にまで入りこむ。そんな社会は生きづらい。また、そんな社会が長続きするとは思えない。でも、今の日本はそれに近い。日本ほど人々が互いを急かせ、自分を急かせている社会も珍しい。
サン・テグジュペリの『星の王子さま』がこう言っていたのは、僕たちのことではなかったか。「みんなは( ③ )に乗りこむけれど、今ではもう、何を求めて、どこに行こうとしているのかもわからなくなってる」。
僕たちは親として、子どもたちにいったいどれだけ「がんばれ」とか「急げ」とか言ったら気がすむのだろう。待てないのは、他人に対してばかりではない。自分自身にも待てないのだ。しかし、僕たちのこうした「④がんばり」が地球を蝕み、実は自分自身をも蝕み、その人生を空っぽにしてしまうことが見えてきた。
( ⑤ )、もうがんばるのをやめよう。もっとスロー(遅い)に生きることを考えてみよう。スローに生きるとは、自分の時間に、他人の時間に、自然の時間に寄り添うように生きること。あなたに、⑥こんな脳性麻痺の詩人宇宙塵氏の詩を贈りたい。
がんばらないは、幸せだ。
がんばらないは、自分の時を刻むこと。
がんばらないは、自分を知ること。
がんばらないは、地球を愛し続けること。
がんばらないは、宇宙。
がんばらないは、私だ。
(辻 信一「がんばっている人」による)
問1 ①「根っこの部分でつながっている」とあるが、筆者は環境破壊や戦争を引き起こす根っこの部分とは何だと考えているか。
1 経済成長 2 競争原理 3 社会発展 4 相互扶助
問2 ②「競争がないと、人は怠けるようになる。すると、その社会は発展をやめて停滞してしまう」とあるが、筆者はこうした意見についてどう考えているか。
1 競争原理を社会原理にすることに基本的には賛成だが、もう少し競争が少なく、もう少しスローな社会の方が住みやすい。
2 賛成できない。社会には競争に向かない場所もあり、またゆきすぎた競争が地球や自分自身を蝕んでいる事実に私たちは気づくべきである。
3 賛成である。生産性や効率性をめぐる競争が社会を発展させてきたのであり、それを否定する意見を認めるわけにはいかない。
4 反対である。これまでの価値観を全面的に改め、競争から相互扶助へ、経済優先から自然との共生へ、今の社会を変える必要がある。
問3 ( ③ )に入る語はどれか。
1 各駅停車 2 長距離列車 3 寝台列車 4 特急列車
問4 ④「がんばり」は何を意味しているか。
1 競争に勝とうとすること 2 ファストに生きること
3 自分を急かせること 4 スローに生きること
問5 ( ⑤ )に入る語はどれか。
1 すると 2 ところで 3 だから 4 しかし
問6 ⑥「こんな脳性麻痺の詩人宇宙塵氏の詩を贈りたい」とあるが、筆者はどうして宇宙塵氏の詩を引用したのか。
1 人生を楽しく幸せに生きることの大切さを教えてくれるから。
2 障害者の目で、「がんばる」ことが地球を蝕んでいることを告発しているから。
3 私たちと違う世界の見方を知らせ、読者に何が大切かを考えてほしかったから。
4 人間がお互いに助け合って生きることの大切さを教えてくれるから。